2014年4月25日金曜日

ゲームバンドル 2014 あるいは ゲームバンドル 2004 -終焉-

Origin Gamesを自分から殺しといてEAって奴は本当に…

2010年にWolfireがHumble (Indie) Bundleを発表した時は衝撃的だった。既にあれから4年の歳月が経ち、ゲームバンドル(とでも呼べばいいのだろうか)はもはやPCでゲームを遊ぶボンクラにとっては一般的なものになり、たくさんの零細フォロワーが登場し、本家HumbleではEAなど大手が参画する業界のムーブメントとなった、ゲームがまとめて欲しい金額か、とんでもない小額で手に入っちゃうんだぜ?なんてハッピーなんでしょう、でも僕ら人類は欲望の赴くままに生きている、いや欲望とは液体だから、上からそれを垂らせば、たちまち下へ下へと広がっていく、僕らはもう元へ戻る事はできないんだ。

扇情的にクソみたいなウェブメディアが1ドルから買えると喧伝し、良識派が「いやいや、こいつはPWYWといって、あなたが欲しいと思った金額を入れるんですよ、1セントで買えるってのは違うんですよ。」なんて当たり前の事を説いても欲望は瞬く間に下に広がっていく、誰がどう思おうがゲームソフトの価値はあの日よりも下がってしまったんだ。

さて、そんなゲームバンドルが急速に広まりはじめた2010年から、10年ほど前に遡ろう。韓国では번들が加熱し、市場は振り返ればチキンレースとも呼べるような熾烈な競争を繰り広げていた。そう번들だ、わざとらしくハングルで書いたが発音するとパンデゥ、すなわちBundleの事である。


번들(Bundle)、正確には번들CD(Bundle CD)は90年代後半に国産のPCゲーム系雑誌各種、Gamepia、韓国版VジャンプからはじまりPC Player、PC Powerなどの各誌が競っていたとされる暗黒ムーブメントだ。もともとコンピュータ系のZineはディスク付録と相性の良い出版メディアだったし、世界的にもフリーウェアやデモ、パッチなどを配布する媒体として重宝されていたが、韓国のバンドル競争は同じスタート地点から早い段階でフルゲームコピーを付ける方向へ舵を切った。歴史的にターニングポイントとされているのは96年、How PCというコンピュータ誌が大々的に広告を打ち出して実施したNASCAR Racingのフルバージョン収録とされている。昨年に出たばかりのゲームが雑誌付録についてくるとなりゃそりゃ売れるのは当然だ。

これはバンドルが加熱しはじめた97年のGamepia
バンドルされてるDune2はRTSの始祖的タイトルで、
その後のCommand & Conquerに繋がっていく93年作。

翌年には先に挙げたPCゲーム系Zineの各誌が追ってBundle CDにフルゲームを付け始める。当初はリリースから数年を経て絶版になってるようなクラシックタイトルの発掘的意味合いを含ませていたらしいが、それもロングセラー作品で、別に絶版でもない大航海時代2(なぜか韓国でえらい人気があんだよね)あたりがバンドルされると防波堤は崩れ去り、次なる脆弱な壁へと波は押し寄せていた。97年の時点で、すでに韓国のPCゲーム誌は誌面の内容だけで勝負できる世界でなくなっていた。欲望はずらずらと垂れ流され、ユーザーの雑誌選びで最も重要なのはバンドルされているゲームのセレクトとなった。こうなれば、もはや書かれている記事などフルゲームにぶら下がるオマケだ。

なお、既にこの年の時点で、各誌はバンドルCD競争を続ける先に待つ破滅を止めるべく一度協議に入ったと言われている。「もうオマケでついてくるゲームが主役の雑誌なんてやめましょう…」賢明な判断だったが、一月も待たずに抜け駆けしたGamepiaが他誌にないバンドルのおかげで競合トップの売り上げを勝ち取ると醜い戦いは小休止すら挟むことなく即続行となった。それでもまだゲームのセレクトの質を推していた頃は良かったとすら言われている。バンドルCDとはすなわち雑誌にバンドルされたCDという意味だが、これも程なくして大量ゲームのバンドルという意味へと変質していく、ゲームですら質より量の時代が即座にやってきた。


韓国版Vジャンプ、誌面でMight & Magic 7特集をすると同時に、
1年前にリリースされたM&M6をそのまま付けてくるのがバンドル流。
他にもいくつかのフルゲームが収録されているようだ。

2000年になると数こそ落ち着いたが、発売1年もしない新作ゲームがバンドルCDに収録されていた、Might And Magicシリーズのようなビッグタイトルまで雑誌付録になったし、Armymen 2に至ってはリリースから2ヶ月で雑誌付録に成り下がった。こうして複雑な因果が韓国のPCゲーム市場を疲弊させていった。販売/代理店各社はユニオンを組んで価格を守るべきだったろう、肝心のライセンスを雑誌に叩き売ったのは彼ら自身なのだから。だがこれも鶏が先か卵が先かの話である。なにより既に手遅れだった、今やゲーム一本の価格は月刊誌一冊にも満たなくなっていた。実際にいくつかの少なくない会社はマニュアルもボックスも省いたCDケースにディスクを入れただけのパッケージを10,000ウォン(日本円で1,000円)以下で売る薄利多売路線となっていった。バンドルを拒んだパブリッシャもまた例外なく熾烈な競争を強いられたのだ。(Blizzardはこの余波を受けて疲弊したゼロ年代の砂漠を完全勝利した稀有なケースだ)

PC Power 伝説のArmymen 2表紙
1999年の3月にリリースされたにも関わらず、
フルバージョンが即 雑誌付録に成り下がった。

信じて送り出した緑色の兵士がPC Powerさんの変態調教に
ドハマリしてアヘ顔バンドルCDを送ってくるなんて…

特にPC Power誌はバンドルの権化とも言うべき存在だった。リリースから僅か1年のQuake3を2001年6月号で専用のCDラベル、ケースを付属する(つまりそのままリテールコピーを雑誌に付けていたのだ)など他を圧倒するバンドル力の高さを見せた、ここは他にもオリジナルは4枚組のBaldur's GateをCD2枚づつと専用ケースを分けて2ヶ月、ついでに抜かりなく拡張パックの1枚まで翌月に付けたりしている。さながら月刊バルダーズゲート、創刊号はケースもついて○○円、ディアゴスティーニも真っ青である。

韓国の出版業界はバンドル病に冒されてしまった、ゲームバンドルの文脈を引き継いで映像コンテンツ、映画やドラマもDVD時代になればやはりバンドルされた。あらゆるソフトが投げ売られ、買い叩かれるのだ。先陣を切ったPCゲーム誌はバンドルゲームのライセンス取得に多くの予算が割かれた結果、格段に誌面のレベルを落としたと言われている。2004年にもなると各社バンドルが途切れ、そして同時にバタバタと廃刊となっていく。かつてバンドルCDのボリュームにより業界1位の販売部数を誇ったPC Powerも2005年には力尽きていた。僅か10年と経たずにリテールゲーム販売ビジネスもメディア出版も仲良く朽ち果ててしまったのだ。

垂らした欲望のフレーバーをよく味わってください。

これらの勢力が衰える中で、反対にWebとネットゲームが勢いを伸ばしたのは当然の結果だったと言えよう。そもそもリテール販売の死が人類の欲望の死と結びつくわけではない、ゲームが売れなくなれば、ゲームをはじめからタダにして、それを入れ子に中でモノを売るのだ。彼らはしたたかにもゲームデザインに重力を取り入れた、つまり欲望の向かう先で商売をしたのだ。例えばゲーム内で、それは、それはエゲツない確率でレアアイテムが当たるいわゆるガチャなんかを売り始めた、そして、あまりにもエゲツないので国の指導や法整備がされて、それにより仕様が変わったり、売る物自体が変わったりした…


これは10年前の韓国だ、ならば僕らは明日に一体何を見るのだろうか?

各誌にバンドルされたフルゲームのリスト:
http://pgr21.com/pb/pb.php?id=humor&no=63978

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ugh